注目のキーワード「RPA」って何!?

ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation、以下RPA)という言葉が話題になりはじめている。RPAとは、ホワイトカラー職種やバックオフィスにおける、反復的な業務プロセスを自動化するソフトウェアロボット、もしくはシステム全般を指す。コンサルティング企業・デロイトトーマツのウェブページには、以下のような定義があったので参考までに引用したい。

「ロボティクスと言えば、一般的には工場で特定のタスクを請け負う工業用ロボットを指します。工場で働くロボットは早いスピードで同じ作業を何度も繰り返し行うのを得意とします。Robotic Process Automation(RPA)は、工場でロボットが組立やパッケージングをするように、例えば人事や経理財務などの業務領域で、ヒトの動きを真似て各種アプリケーションを操作するソフトウェアを指します」

各企業の顧客対応、経理、会計、財務、人事、労務、法務など事務作業の現場では、人間が情報を絶えず把握・理解すること、また手作業を反復的に行うことで成り立っている業務が多岐にわたる。メールで送られてきた情報を担当部署に知らせる作業、電話内容を聞き取って内容をデータ入力する作業、および問い合わせの種類を類型化し適切な答えを案内する作業、自社の採用基準に見合う求職者を見極め評価する作業、経費の領収書を整理しPCの会計ソフトに打ち込む作業などなど、実例を挙げていけば枚挙に暇がない。RPAが注目を浴びるのは、人間の介在がどうしても必要だったそうした業務を、効率よく自動化することができるかもしれないという期待からだ。

RPAに必要な様々なAIの要素技術

そのRPAの普及を支える、もしくは中心的な要素になると目されているのが、人工知能技術となる。人間が行ってきた反復的な業務をソフトウェアロボットが代替するとなると、求められる能力がおのずと出てくる。それは人間と同じように、もしくはそれ以上に与えられた情報を正確に「認知」する能力だ。そこで、人工知能技術がカギを握ることになる。

例えば、ある顧客からクレームの電話が来たとしよう。従来であれば、人間の顧客対応係が内容を理解して、似たような事例があったかどうか調べ、対応や回答を伝えるというプロセスが必要だった。RPAでそのクレーム対応を自動化するとすれば、まず顧客が何を話しているのか正確に聞きとる必要がある。つまり、「音声認識」の技術が必須となる。次いで、クレームの意図を把握することが求められるので、「自然言語処理」の技術が問われる。さらにクレーム対応や回答を自動化するとすれば、似たような事例についてデータベースから探し出してくる「推論・探索」の技術も必要になってくるだろう。

その他にも、郵送された請求書や領収書などアナログデータの処理を自動化したいという企業側の需要があるかもしれない。そのような場合であれば、手書きもしくは印字された文字をソフトウェアロボットが「認知=読み取り」する必要がある。そこでは「画像認識技術」の精度が自動化の成否を分かつ。そのように、RPAにはマシンラーニングなどを含む人工知能が不可欠となる。

企業側がRPAを導入するメリットはとても大きいとされる。まず最も期待されるのが、人員削減によるコストカットだ。次いで、ソフトウェアロボットが作業を自動化するので業務上のミスが減少し、業務時間の短縮、コンプライアンス改善、売上の増加が見込まれる。また一部では、人間の従業員が単純作業から解放されることで、より高度な仕事に再配置できる可能性があるとも期待されている。

企業への導入が進められるRPA

2016年頃からは、実際にRPAを導入した企業の成果も報じられ始めた。前述のデロイトトーマツの資料によれば、とある大手銀行では顧客のクレーム処理に85個のソフトウェアロボット、もしくはボット(bot)を投入し、年間150万件の苦情を処理した。結果、銀行はフルタイム従業員230名に準ずる処理能力を確保することに成功し、人間の従業員を雇用する場合と比較して約30%のコスト削減を達成した。加えて「1度で仕事が完了する割合」も27%増加したという。

一方で、単純な作業の自動化という範疇を超えて、新たな顧客満足を得るきっかけを得た企業もある。英流通企業「Shop Direct」は、RPAを利用して、洪水でやむなく商品代金の支払いが遅れた顧客を把握。本来であれば課される延滞料を、対象となる顧客に限って自動的にキャンセルするようにした。

似たような事例に、英国の鉄道事業者Virgin Trainsのエピソードがある。同社は人工知能技術を駆使したRPAを導入し、遅延した列車の払い戻し作業を自動化したという。システムが顧客のメールを受信すると、自然言語処理ツールが含まれたテキストの意味・感情を理解し内容を分類する。もしそこで顧客の不満を識別すれば、ソフトウェアロボットが返金処理を実行するというものだ。このメール受信から返金作業までは人間の手を介することがなく、プロセス全体が自動化されている。結果、Virgin Trainsは従来のタスク処理時間、および顧客のメール対応する手作業を85%削減することに成功したという。

2016年12月、日本ではNECがRPA導入に積極的な姿勢を明らかにした。NECはまず、経理・財務部門の反復作業や定型業務に、ソフトウェアロボットをテスト導入。OCR技術などを搭載した高性能スキャンロボットプラットフォームを採用し、領収証の読み取りから支払い業務までの自動化するとしている。

実際のところ、まだまだRPAの世界市場は大きくない。それでも順調に拡大するという予測が多く、なかには2020年までに世界市場規模50億ドル、年平均成長率60%を記録するとする分析もある。積み上げられた領収証の山を整理する作業や、相次ぐクレーム対応から解放される。RPAが普及すれば、働き手にとってはストレスフリーな職場が実現するかもしれない。