不動産業界にもAI浸透の流れ…売買価格を適正に算出することが可能に

相鉄グループの相鉄リナプスは2017年4月、AIがマンション売却価格を予測して自動算出するシステム「リナプス・シミュレーター」の提供を開始した。同社のウェブサイトで利用できる「リナプス・シミュレーター」は、マンション売却希望者が住所や占有面積などの情報を入力すると売却予想価格を自動算出してくれる。予測エンジン「GEEO」を用いたサービスだという。

この一例からもわかるように、不動産業界において人工知能やビッグデータを活用した動きが現在、急速に広がっている。「不動産テック(Real Estate Tech)」というキーワードで語られるその取り組みをいくつか見ていこう。

ソニー不動産、HOME’Sの価格算出ソリューション

まず着目したいのは、不動産価格に関するサービスだ。例えば、ソニー不動産が2015年10月に開始した「不動産価格推定エンジン」は、ソニーとソニー不動産が新たに共同開発した機械学習ソリューションだ。ソニーR&Dのディープラーニング(深層学習)技術を核とし、ソニー不動産が持つ不動産査定のノウハウや不動産取引に特有の知識を組み込んでいる。これを利用することで、1都3県の中古マンションの推定制約価格を算出することができ、常に最新のデータを自動で学習しているという。

見た目もとっつきやすいのは、ネクストが提供する「HOME’Sプライスマップ」だろう。賃貸検索サイト「HOME’S」を運営するライフルホームズが蓄積してきた膨大な物件情報と、独自開発の不動産参考価格算出システムを使って、マップ上にマンション参考価格を丸見えにしている。知りたい物件の参考価格を誰でも簡単に調べられるサービスだ。

完全に条件が一致する物件が2つと存在しない不動産は、そもそも価格がわかりにくい資産といえるだろう。価格を知りたいと思っても、類似物件の情報を参考にしたり、不動産会社から見積もりをとったりするのが従来の方法だった。しかし、上で紹介したような人工知能やビッグデータを活用した価格推定サービスを利用することで、不動産仲介業者などを介することなく、低コストで参考価格を把握できるようになった。

不動産投資とAIサービス

不動産投資に関する「不動産テック」も登場している。リーウェイズが提供する「Gate.」は、不動産の本質的な価値を推定する不動産投資シミュレーターだ。4000万件の物件データと人工知能によって算出された物件固有のキャッシュフロー推移と売却予想価格が導き出されるため、直感的な投資分析ができるようになっている。投資リスクを減らして収益を最大化するための情報を集約し、購入から売却までの収支をワンクリックでシミュレーションしてくれる。同社は、その試みについて「次世代インテリジェント不動産投資」と銘打っている。

また、一般消費者と不動産会社をより身近にするようなサービスも。野村不動産アーバンネットの「住まいのAI ANSWER」だ。チャット型のQ&Aサービスで、不動産の購入または売却を検討する顧客の疑問にAIが24時間、いつでもどこでも回答してくれるという。通常のチャットのように自分で質問を入力できるだけでなく、用意されている選択肢から項目を選ぶことも可能。心理的なハードルが高いとされる不動産会社へのアクセスを、気軽に実現するサービスとなりそうだ。

不動産仲介にもAI導入の流れ

チャットでいえば、伊藤忠商事はセンチュリー21・ジャパンと組み、インターネットのチャット機能を使った賃貸住宅の仲介を始めるという。「日本経済新聞」電子版(2017年3月30日付)によると、不動産ポータルサイト「イエッティ」がチャットのシステムを提供し、2018年からセンチュリー21の全国約500店舗に導入を予定。

これまでネットを使った不動産の仲介ができなかったのは、宅地建物取引業法で契約の重要事項説明について、仲介店側が“対面”で顧客に説明することを義務付けていたからだ。また、重要事項説明書についても、“書面”の交付が必要とされているため、電子メールなどの方法による交付が認められていなかった。しかし、2017年10月にもネットで説明できるよう法律の解釈を変更する方針が出ており、国の規制緩和が「不動産テック」のさらなる追い風になりそうだ。

人工知能とビッグデータを取り入れることで、利便性の高いサービスが次々と生まれている不動産業界。人工知能が不動産業界に介入する領域は、今後も加速度的に拡大していくことだろう。誰の目にも明らかな客観的なデータに則した不動産価格の算定が常識となれば、透明性の高い売買に繋がり、買い手にとってはより購入しやすい環境が生まれるはずだ。