売上予測と在庫管理にAI援用…販売数予測の誤差1~2個という成果も

商品の販売数を正確に予測することで在庫ロスをおさえ、企業の利益を最大化する――そんなビジネス成否が懸った重要な局面で、人間の判断をサポートする役割が人工知能(AI)に強く期待されはじめている。

AIによる分析は高精度…販売数予測の誤差は1~2個

2017年2月、ホームセンター・グッデイは、商品発注業務に人工知能を活用していく方針を明らかにした。「毎日新聞」(2月22日付)などが報じたところによると、その主な目的は過剰発注と値下げ販売の回数を低減させることにあるという。

在庫が余り、長期間にわたって購入されないとなると、やがて商品の品質は低下してしまう。そのため流通や小売企業などは、定期的に在庫を安値で処分する必要性に迫られる。九州エリアを中心に約60店舗を展開するグッデイにとっても、そんな過剰発注と値下げ販売は悩みの種だったという。

グッデイではこれまで、各店舗のスタッフが過去の販売データを参考に、在庫数を確認・発注を行ってきた。しかし、人間のスタッフが経験則や肌感覚で発注するとなると、どうしても在庫ロスが生まれがち。しかも1度の発注に2~3時間かかっており、とても非効率だった。そこで人工知能の採用を決めたという。

なお、今回グッデイが導入を進めるとしているAIソリューションは、ベンチャー企業「グルーヴノーツ」が開発したマシンラーニングサービスだ。同サービスは販売データや気候データなど膨大なデータを分析して、1日毎の商品の売れ行きを予測する。すでにテスト的に「使い捨てカイロ」の販売数の予測が行われたそうだが、その予測と実売数との誤差はわずか1~2個という成果が公表されている。今後、同社は個別商品を対象にしたAI分析を順次拡大し、最終的には約6万点にもおよぶ全商品をカバーしていく計画だとしている。

気象情報と組み合わせた需要予測モデルの構築にAI活用

2017年5月16日には、日本を代表する大手コンビニチェーンと総合商社も、新たな動きを見せた。「朝日新聞」(5月18日付)のインタビューに応じた三井物産の安永竜夫社長は、セブン&アイ・ホールディングスとの人工知能分野における連携強化に言及。商品開発や在庫管理の精度を向上させていくとした。

安永社長によれば、コンビニ業界は現在、顧客の消費スタイルの変化や、立地条件に左右される商品ラインナップに、柔軟に対応することを迫られているという。ネックになるのは、いかに顧客の消費性向を迅速かつ正確に分析するかだが、そこで人工知能の能力を上手く活用していこうというのが両社の狙いだ。

その他、興味深い動きとしては、日本気象協会の気象予測情報を生かした「省エネ物流プロジェクト」などもある。同プロジェクトには、スーパーマーケットチェーンなど、約30社が参加。気象情報と販売データを人工知能で分析することで、新たな需要予測モデルを生みだすことが目標として掲げられている。

食品業界では、小売店からの発注を予測して、メーカー側が商品の生産数を調整することが一般的とされてきた。いわゆる「見込み生産」だ。しかし、顧客の購買意欲はさまざまなファクターによって左右される。同プロジェクトでは、そのうちのひとつとして、気候や気温に焦点を当てた。実際、暑かったり、寒かったり、また晴れたり、雨が降ったりなど、気候によって人間の消費行動は変化する。その変化を人工知能でより精密に分析することができれば、より正確な販売予測が立ちうるし、食品関連企業の在庫不足や食品ロスを減らすという成果に直結する可能性はとても高いと考えられる。

「在庫ロス」と「顧客満足度の向上」に資する人工知能

企業にとって、適切な在庫管理はふたつの意味で重要となる。まず、前述のように在庫が余ると収益が減少してしまう。逆に在庫が不足していると、顧客の満足度を担保できることができず、企業として信頼を失ってしまうことに繋がりかねない。消費者の目線で見れば、実店舗に足を運んだものの、お目当ての商品を買うことができなかった時の「がっかり感」、また商品が届くまでのタイムロスはできるだけ避けたいものである。

多すぎず、少なすぎず。そのように適切な在庫数を常に維持することが、企業にとっては課題であり、同時にビジネス成功のカギとなる。現在、そのように「在庫ロス低減」と「顧客満足度向上」を人工知能に託そうという企業は、日本ばかりではなく、海外でも増えてきている。

代表的な例で言えば、EC大手「eBay」の動きだろう。同社は2016年7月にイスラエルのスタートアップ企業「SalesPredict」を買収した。SalesPredictは、顧客の反応を分析し潜在的な需要を予測することで、企業の販売量増加を支援するシステムを提供する企業だ。

販売数予測と在庫管理の問題を人工知能に託そうという企業は、今後も増えていくはず。気候・気象データなどのように、どんなデータと組み合わせた時、より正確な販売予測が可能となるか。そんな需要予測モデルの発展とともに、見逃せない話題となりそうだ。