都市運営で活躍するビックデータ☓人工知能…日本の花火大会には「警備用AI」も登場

「都民ファーストの会」圧勝…都民の注目集める新都政

2017年7月2日に投開票された「2017年東京都議会議員選挙」では、小池百合子知事が率いる「都民ファーストの会」が49議席を獲得。都議会における第1党となった。選挙前の予想を覆す歴史的圧勝に、一部、専門家たちからは驚嘆の声が挙がっている。今後、小池知事、そして「都民ファーストの会」が東京という都市のどうデザインし、牽引していくのか。都民の視線はますます集中していくと予想される。

ところで、都市運営について興味深い話題がある。これまで都市の未来を担うのは政治家や公務員、つまり人間の仕事だったが、近年ではテクノロジーを駆使して「理想の都市」を作ろうという動きが世界各地で活発化してきている。そのテクノロジーの中心に据えられつつあるのは、「ビックデータ」と「AI(人工知能)」だ。

シカゴ市を見守るビックデータ&AIシステム「WindyGrit」

都市で起きている出来事を詳細に把握することができれば、住人の生活の質を向上させることができる。そんな“都市を見通す機能”を実現したシステム・アプリケーションのひとつに「WindyGrit」がある。同システムが稼働するのは、米国シカゴ市だ。WindyGritは都市の各エリアに設置された機器からビックデータ収集・解析し、都市の「どこ」で「いつ」「どんな」イベントが発生しているか、リアルタイムで確認できるシステムだ。

シカゴ市は現在、都市の各コミュニティ内で起きている出来事を把握するため36のデータソースを選別し、データベースに統合している。そのデータソースには911回線(警察・消防・救急など緊急通報)、311回線(非緊急、及び苦情通報)、事業者登録証、建築物違反、交通情報、気象情報、緊急車両のリアルタイム運行・運用情報などが含まれる。そしてそれらデータは、都市マラソンのルート策定、交通事故の予防・対応、犯罪活動抑制、病気の発生の検知など、あらゆる政策課題解決のために活用され始めているという。

食品安全性検査の効率改善の分野でも、WindyGritが活用されている。シカゴ市にはレストランの数が約1万6000店舗あるが、衛生調査官の数は36人しかいない。言い換えれば、リソースや職員を雇う財源が不足、もしくは節税している状況と言えそうだが、そこで効率的な調査計画を立てるのにWindyGritが利用されている。

WindyGritの地図アプリケーション上には、市内にあるレストランが表示される。イメージとしては、Google Mapなど地図アプリを想像してもらえる分かりやすいかもしれない。ただWindyGritでは、マウスを移動させると各店舗の過去の法律違反など、詳細な「店舗データ」まで参照できるようになっている。例えば、直近の調査で安全検査をパスできなかった店舗、また頻繁に衛生問題(食中毒など)が発生する地域を把握することも可能だ。その他にも、天候や窃盗の多さ、住民の苦情、近隣の酒類もしくはタバコ販売許可などデータソースが統合されていて、調査官が調査を進める上で、どのような因子が「食の安全」に直結しているか、効率的に知ることができるようになっているという。

加えて、システムに統合されたAIが、安全検査に合格できない可能性が高いレストランを分類。計画立案者や調査官の判断を支援する。人員が限られている衛生管理者は、それらAIの予測を利用して検査計画の優先順位を設定。リスクの高い店舗にだけ調査網を敷く仕組みだ。実際、WindyGritを採用した結果、重要な違反を発見するのにかかる調査の平均時間を、1週間以上短縮することに成功したと言われている。リソースおよび財源不足をテクノロジーで補うという成功例が、シカゴ市では実際に生まれはじめていることになる。

疫病リスク軽減にも利用される「WindyGrit」…日本では花火大会を見守るAI登場

なおWindyGritは、公衆衛生上のリスク軽減にも使用されている。例えば、夏のシカゴには、最悪の場合、住人の死亡原因ともなる西ナイルウイルスを持った蚊が繁殖する。そこでWindyGritを利用して、市内189カ所に設置された蚊捕獲用トラップのうち、最も多く蚊を捉えたトラップのデータを解析。病気の拡散を抑制する計画をまとめたという。

一方、東京都では夏の風物詩である「隅田川の花火大会」の警備支援に、AIが導入されることが決まった。これは、隅田川花火大会実行委員会・台東区文化産業観光部観光課と、AI企業・Specteeが協力して取り組むもので、全国でも初の試みになるという。

仕組みとしてはまず、花火大会に参加した人々のSNS投稿をAIが収集・解析する。そして、そのデータからケンカや事故、ゴミの散乱、混雑状況などの情報を割り出し、管理センターに報告するというものだ。

日本各地で行われている大規模な花火大会では、会場に集まった人々の安全確保が長らく課題とされてきた。通行規制が上手くいかないと、現場は大混乱。時に、混雑のため人がドミノ倒しになり、人命に係る被害が出たケースもある。また花火大会の裏方関係者によれば「管轄の警察所長が変わるたびに方針も変わる」そうで、警備のレギュレーションの統一性を確保するのも難しいとされていた。

今回、導入される「警備用AI」がどれほどの効果を発揮するかはまだ分からないが、都市の文化や住民の楽しみを見守るテクノロジーの発展には、期待せざるをえないだろう。小池都政がAIやビックデータを利用した都市運営に積極的になるのか。その去就にも、併せて注目したい。