「10年後に勝つ企業」になるために考えるべき「AI」のこと

現在、国内でも事業会社などにおけるAI(人工知能)導入事例が少しずつ見られ始めている。世界的な潮流であることは言うまでもないが、一方で、国内の環境要因として、導入が迫られているといっても過言ではない。長期的な視点に立ったとき、企業はAI導入についてどのように考えるべきなのだろうか。国内のAI導入事例を切り口に、あらゆる方面から考えてみる。

国内企業こそ「AI導入」を急務と捉えるべき
前述の通り、AIやRPAの導入が世界的な潮流であることは間違いないが、一方で日本固有の必然性も存在する。それが、「労働人口の減少」と「働き方改革」の流れである。
少子高齢化が叫ばれて久しい日本だが、労働人口の減少は特に顕著であり、2010年に総人口の約63.8%にあたる約8,000万人だった生産年齢人口率は、2030年には約58.1%の約6,700万人まで減少することが予測されている。
また、2016年から政府によって策定され、現在ではいくつかの具体策が実行されている「働き方改革」の計画。このような、ワークライフバランスを重視させる働き方の推奨は、結果的に企業に対して「業務の効率化」を要求しているということだ。
これらの要因により、企業はこれまである程度柔軟に捉えられていた「人的リソース」と「労働時間」という二つの項目を厳密に考え直さなければならなくなった。その結果として、それまで属人的に行ってきた業務を整理し、人的リソースが不要な部分は、AIや機械に代行させるという必然性が出てきているのだ。

実際の導入事例
すでに国内でも、一般企業における多くのAI導入事例が発表されている。その一部をご紹介していこう。

金融業界:「みずほ銀行」AI活用による個人向け融資
みずほ銀行は、ソフトバンクと組み、AIを活用した個人向け融資を2017年9月より開始すると発表している。今回の取り組みでは、個人の銀行口座の入出金履歴、携帯電話料金の支払い状況、また職歴などのデータを判断材料として、AIが与信スコアを判定、スコアに応じた融資上限や貸出金利を決定するというもの。
特筆すべきは、判断までの時間であり、それまで最低でも数営業日かかっていたものを、約30分程度で決定することが出来るようになるという。
この取り組みにおいて重要なことは、企業内の業務効率化、コスト削減はもとより、一般顧客のUI/UXの向上が見込まれることだ。これまで個人向け融資を行う際に記入していた項目を排除できたり、与信の結果が出るまでの精神的なストレスを減少させられたりすることは長期的な顧客リレーションを考えると極めて大きなメリットといえるだろう。
なお同行は、顧客サポートサービスにおいても、IBMの人工知能「ワトソン」を導入し、音声認識と回答候補の提示精度はともに90%(目標値ともに80%)という結果を出しており、コール時間の短縮も実現している。

医療業界:「損保ジャパン日本興亜ひまわり生命」保険金・給付金支払い業務簡素化
医療業界もAI導入を実施している。損保ジャパン日本興亜ひまわり生命では、保険金・給付金などの自動支払いの実現に向けてワトソンを活用している。
それまでは、平均約3営業日程度かかっていた支払いまでの所要期間を短縮し、請求の約30%を当日中の支払いに変更する、というものだ。
また、海外の事例ではあるが、米大手健康保険「WELLPOINT」が、医療保険適用承認プロセスの短縮を実現しているというのも大きな成功事例だ。同社は、AIを使い、治療についての要求を分析、ポリシーやガイドラインと照合させて客観的かつ一貫性のある「レビュー・承認」プロセスを実現させている。
医療業界は特に、業務スピードが人命に関連してくる業界である。当然ながら、このような海外事例は、国内の医療業界にも転用されるだろう。

メディア業界:「メディアドゥ」電子書籍要約・紹介サービス
電子書籍取次大手であるメディアドゥは、電子書籍の内容をAIに要約させ、読者に紹介するマーケティングサービスを開始している。
そもそも、高額で専門性が高いビジネス書などは、購入を決定しづらいため、購入前にその書籍の内容を把握できるように要約するというものだが、特筆すべきは、サイト利用者が、その要約文の文字数を指定できるという部分だ。指定した分量で書籍の内容をAIが要約してくれるという考え方は、まさに「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」をAIで実現しているといえるだろう。

コンサルティング業界:「アクセンチュア」顧客窓口へのAI導入支援
ビジネスコンサルティングファームも、AIに関するサービスパッケージを作っている。同業界大手のアクセンチュアでは、AIに広報や顧客サポートの機能を持たせ、企業の総合的な窓口として活用する支援サービスを開始した。
世界の200社あまりが持つ画像認識や自然言語解析などの技術を利用し、企業それぞれのニーズに合わせた組み合わせを提案することで強みを持たせている。複数のクライアントで導入に向けた検討が進んでいるとのことで、実際の運用モデルが登場するのも時間の問題といえるだろう。

企業なりのAI活用を検討していくべき
紹介した通り、AIはあらゆる領域で導入が検討または、一部開始され始めている。しかし、そもそも万能なAIは存在しない。
例えば、AIに、人間的・常識的な判断を要求することは難しく、問いや質問を生み出す、また突発的な閃きを期待することは今のところ現実的ではない。
まずは、生産年齢人口率が大幅に減少する約10年後を見据えてAI導入を検討する際、企業がいま行うべきことは、業務整理である。
従来の一般的なBPOの概念よりも広義の意味で、コア事業とノンコア事業を分け、属人的であった業務も整理すること。つまり、AIを活用する領域と人にしかできない業務の見極めが必要なのだ。それによって初めて、業者やベンダーと擦り合わせ、AIの導入を進めていくことになる。