シンギュラリティ時代における「働き方」の心構え

「シンギュラリティ」という言葉、すでに多くの方が耳にしたことがあるのではないだろうか。この言葉は、発明者でフューチャリストのレイ・カーツワイル氏が提唱した概念で、「人工知能が、人間の能力を超える技術的特異点」を意味している。そしてそれは、2045年という、そう遠くない未来に起こると予見されているのだ。
多くの企業がこの変化を見越し、既存の業務の在り方を変えようとしている。当然、働く側も、過去と全く同じ仕事観では未来とずれが生じるだろう。
では、シンギュラリティ時代における「求められる人材」、「仕事の選び方」のポイントはどういったものなのかを考えていこう。

人工知能(AI)によって引き起こされる変化
そもそも、AIの進化により、仕事にはどのような変化が起こるのか。オックスフォード大学の研究「The Future Of Employment」によれば、「10~20年程度のうちに自動化される可能性が高い仕事は全体の47%に上る」と予測されており、特に運送や物流に関する仕事の大半は消滅、サービス業もかなりの部分が消滅すると予測されている。この変化を見越し、自身の職業を考え直し、方向転換する人も多い。
世界有数の投資銀行であるゴールドマン・サックスでは、すでに大量のコンピューターエンジニアを雇用し、それまで人間に依存していた株取引などのトレーディングの自動化を進めている。当然それに伴い、労働者のリストラクチャリングが行われ、2000年には600人いたトレーダーがわずか2人になったとのことだ。このような動きはゴールドマン・サックス一社に留まらず、ウォール街全体に波及している。
このような流れは、国内でも巻き起こる変化である。事実、経済産業省はAIやロボットの活用を柱とする第四次産業革命の実現に向けて「新産業構造ビジョン」を検討している。ここには、AI市場などへの参入を検討している大企業やベンチャー企業を支援する枠組みが含まれている。また、産業競争力強化法などの関連法制を2018年にも一括改正するなど、法整備も含まれている。経産省がこのような産業構造に関するビジョンを改定するのは2010年以来であり、AIのインパクトが国内でも極めて大きなものである証左といえるだろう。

現時点におけるRPAの有用性
また、人工知能とは異なるが、現段階で業務効率化を実現しているものが、RPAである。RPAとは、「Robotic Process Automation」の略称であり、ホワイトカラー領域のあらゆる業務を代用する技術だ。
これまでのIT技術では、システム構築をすることにより属人的な作業の「簡素化」を実現してきた。しかし、例えば「人の代わりに入力作業を行う」という実作業の代替はかなわなかった。しかしRPAでは、ソフトウェアロボットが従業員の代替として業務を行ってくれるのだ。
例えば、大量の顧客情報をデータとして入力する際、従来であれば、人海戦術的に複数のコンピューターで実作業を行ってきた。しかしそれではスピードに限界があるし、ヒューマンエラーによる入力ミスも発生していた。業務整理・簡素化という文脈では、BPOに移管させてきたなどしていたが、こういった業務全般がRPAに代替されることになる。
このような業務としては、在庫のモニタリングなどのオペレーション業務や採用、退職管理、勤退管理などの単純な人事業務、与信管理、購買発注検証、また、マスターデータ管理や残高照会、レポーティング、経費管理など、比較的初歩的な財務会計管理の業務などで活用が見込まれている。
これはつまり、既存のホワイトカラーの業務の多くをロボットが代替する、ということを意味している。

AI時代の「働き方」とは
では、このような時代に生きる多くの人々は、このような環境変化をどのように捉えるべきなのだろうか。まず、自身が働く産業セクターを検討するという上では、既存の産業がすべてなくなるということはなく、そこまで意識する必要はないだろう。
たとえば、AIが得意とする大量データのストレージを設計、管理する、または処理基盤の性能を維持向上させるなど、ベンダーやビジネスコンサルタント的な業務はこれから多くなってくると想定されている。直接的にAIに関わっていきたいと考えた際には、キャリアを形成しやすいと言える。
一方で、ビジネスパーソンとしての汎用的な価値という意味ではどうだろう。おそらく、最も重要なことは「AIを超える人材」ではなく、「AIと共存することが出来る人材」ということだろう。現時点では、AIも完璧には程遠く、得意領域が人間のそれと明確に分かれている。例えば、人間は、「共感」、「価値判断」、「社会適合性判断」、「柔軟な対応」という側面で大いに力を発揮する。一方で、AIは、「スピード」、「安定したサービスレベル」、「偏見の排除」、「知識量」、「大量データ解析・見地」などの部分で能力を発揮する。
現時点で多くの企業は、それらの特性を把握したAI利用体制を作っている。つまり、これからの時代を生きようとするのであれば、人間にしか出来ない領域で自分の専門性やエッジを磨いていく必要がある。
既存の考えで、社会と仕事を定義するということは難しくなっている。ほぼ確実に起こり得る未来として、戦略的に仕事を選んでいくことが重要なのだ。