農地も畑も不要に!? 人工知能が農業にもたらす“超効率化”とは

65歳以上が63.5%——これは日本における農業就業人口の年代別の割合だ。アメリカ、イギリス、フランスなどと比べると日本の農業従事者の高齢化は突出しており、農家の大幅な減少は確定的な未来といわれている。そこで注目されているのが「スマート農業」というキーワードだ。先端技術を活用することで省力化や大規模生産、品質の向上を目指すスマート農業を加速化させるには、人工知能(AI)が必要不可欠だろう。

作物や農地の管理から間引きまで

実際に、AIが農業にもたらす役割は非常に大きく、さまざまなサービスも生まれている。例えば、自動車部品大手ボッシュの日本法人は2017年6月、AIを利用して作物の病害を予測する農業向けサービス「プランテクト」を開始した。ビニールハウス内に温度や湿度、日射量などを測るセンサーを設置し、その情報をもとにAIが病害の発生リスクを算出。こうして得られた病害のリスクを農家はパソコンやスマートフォンで確認することで、適切なタイミングで予防薬をまけるようになるという。

雑草の除去や不良作物の間引きを自動で行う農業ロボットもある。アメリカのLue River Technology社が開発した「LettuceBot」だ。農業用トラクターに画像認識を行うためのカメラデバイスが取り付けられており、トラクターを走らせるだけでレタスを間引くかどうかを判定して自動的に間引き作業を行う。雑草もロボットが判断し自動的に除去してくれるというのだから驚きだ。間引くための人手と、除草作業にかかる農薬を大幅に削減することができる。

「第二のシリコンバレー」とも称されるイスラエルのProspera社が開発したスマート農業システムは、さらに野心的といえるかもしれない。カメラやセンサーを利用して、農場をすべてAIに管理させようという取り組みだ。カメラやセンサーを使って害虫や病害を自動検出することはもちろん、AIが機械学習した情報と照らし合わせることで、特定の地域の植物にどれくらいの水を与えるべきかを判断し、資源を効率的に使って収穫高の向上も図ることができるという。人間が農地の状況を肉眼で見るよりも、早く、深く、そして正確に管理することができるわけだ。

“超効率化”で農地や畑も不用

ここまでの例からも明らかなように、農業におけるAIの最大の魅力は“超効率化”だ。突き詰めれば今後、「農地」や「畑」という農業の前提条件すら必要なくなるかもしれない。

ソフトバンクグループが開催する「SoftBank World 2017」で孫正義氏の基調講演の際に登壇した米国Plenty社のMatt Barnard氏は、サッカースタジアムの写真を見せながら、「このスタジアム分の野菜をゴールネットの面積で作ることができる。使用する土地が1%以下になるだけでなく、水の使用量も1%くらいになる。非常に効率のいい農業ができるということは、お客様の近くで野菜を作ることができるということ」と語った。

事実、Plenty社は屋内植物工場で高さ6mほどの柱状の装置を使い、植物が水平方向に突き出る形で栽培する“縦型式”の野菜栽培を始めている。顧客のすぐ近くで野菜が作ることができれば、輸送する必要もなくなり、鮮度も栄養価も抜群になるというわけだ。

農業ならではの課題も

とはいえ、農業ならではの課題も少なくない。

農業関連メディア「AGRI IN ASIA」の「農業における人工知能の課題」(2017年3月21日付)によれば、「農業は統計的定量化の目的を含めるのが最も難しい分野の1つ」であり、「農業環境の管理方法を理解することは、何千もの要因を考慮に入れながら、文字通り何百というパターンを考慮に入れるということを意味する」と指摘する。

<機械学習と人工知能を農業に導入する際の問題は、(中略)まったく同じ状況がなく、そのために技術のテストや検証、および展開が他産業よりもはるかに面倒であること>(前傾記事より引用)

考えてみれば、当然のことかもしれない。自然界が舞台であるがゆえに、予期せぬ天候や害虫、病気が訪れる可能性は常に存在してしまう。また国や地域によって土壌や気候もことなるため、価値の高いデータの収集も簡単ではない。

そういった課題を今後、クリアしていくことができるのか。AIがもたらす農業の進化に期待したい。