警備業界にも訪れる新たな自動化の波…AIによる判断・予知に期待

警備員不足は深刻!?…人間とテクノロジーのさらなる連携が急務

犯罪や事故の発生を未然に防ぎ、人々の安全を守ることを業務とする警備業界では現在、AI(人工知能)やロボティクスを使った業務の自動化・効率化が進んでいる。その背景には、日本の社会的課題のひとつである人手不足があることは言うまでもないだろう。日本のある大手警備会社の幹部は、過去にAI Lab編集部の取材に答えて次のように話していた。

「もしもセンサーやロボットなどを含めた弊社のオンライン警備システムをまったく使わなかったとしたら、日本では約1000万人以上の警備人材が必要になるという試算があります。おおよそ日本の人口の10人にひとりと考えると、とても膨大な数です。実際にはそこまでいきませんが、警備業界では人手不足があることは事実です。限られた人間の力を有効活用するためにも、人間がやらなくていいことは自動化していくことが求められています」

そんな警備業界におけるAI活用例として真っ先に思い浮かぶのは、画像解析技術を使った「モニタリング業務の自動化」ではないだろうか。つまり、防犯カメラなどから得た画像・動画データを解析して状況を正確に把握したり、怪しい人物や犯罪の兆候を掴むというものだ。

対象・事象の正確な識別が可能になればまず、犯罪・事件発生時の的確な対応に繋げることができる。例えば倒れている人と、眠っている動物をAIがしっかり区分できれば、人間の警備員が現場に向かわせるかどうかの判断を適切に下せるはずだ。さらにもっと高度なレベル、すなわち「事故・犯罪兆候の割出し」の段階まで実用化できれば、警備にかかるコストを大幅に削減することができるようになるかもしれない。そのような、いわゆる「知能化された防犯カメラ」の需要は今後、高まってくると予想されている。

日本でこの分野の関連商品を開発・販売している企業にアースアイズがある。同社は、センサーおよびAIを駆使した「AIロボカメラ」の開発・販売に注力している。目指すところは、「音源」「温度」「におい」「3D視覚データ」などをセンサーで収集し、それをAIに解析させることで「犯罪が起こる兆候」を事前に予測することだ。同社が発行したリリース(2017年9月6日付)には、想定されるAIロボカメラの具体的な活用例として、以下のように明記されていた。一部、引用したい。

・万引き犯の不審行動を検知、安全管理や万引きロスの改善
・ストーカー被害の削減
・工場の異物混入の防止(フードディフェンス)
・介護対象者の見守り代行、時間およびコスト軽減
・ビル管理などの管理を無人化。警備会社、ビル管理会社の時間と人件費コスト削減
・人の集まる場所でのテロ、事故を無人で管理

上記を見れば今、日本で解決すべき社会的課題が網羅されており、AIを活用した防犯カメラシステムの普及は社会の要請とも言えるだろう。

警備マシンの知能化進む…警備用ロボットも続々登場

一方、海外での事例はどうなっているのか。まず韓国では、韓国電子通信研究院(ETRI)の情報保護研究本部研究チームが同国警察庁と連携し、交通状況や犯罪をリアルタイムで検出できる「AI搭載型の監視カメラシステム」の開発に乗り出すと報じられた。

同システムには、交通事故を自動検出するための動画ディープラーニング技術、容疑者や用の車両を識別・追跡する認識技術、ビッグデータを使った学習技術、映像セキュリティ侵害防止技術などが採用される予定。韓国の警察庁関係者は、他人に危害を加えようとする脅威行動、もしくは銃やナイフのようなものを自動的に認識し犯罪を抑止できるレベルの技術を求めているそうで、2018年から段階的な実用化を目指すとしている。

なお警備分野においては、AIに必要なデータを収集するハードウェアとして「警備用ロボット」の実用化・普及もすでに海外では始まっている。実用・導入実績で先を行くのは米Knightscopeではないだろうか。

同社は2013年にパトロールロボット「K5」をリリース。以降、さまざまなモデルを発表し続けている。2017年8月には、大型の銃器を検出できるとされる「K1」というモデルも公開した。ちなみに「K5」にはビデオカメラ、熱画像センサー、レーザ距離計、マイク、独自開発されたナビゲーションシステムなどが搭載されており、周辺の異常な騒音、環境の急激な変化、指名手配者などを認識し、中央のコントロールセンターに情報を知らせる役割を担っている。

監視用カメラにせよ、警備用ロボットにせよ、知能化された「自動警備マシン」が本格的に普及するためには、AIの発展が不可欠になってくるだろう。加えて、それらマシンが分析した情報を人間がどう利用するか、つまり機械と人間の連携をどう想定・構築するかも、警備のさらなる自動化を達成する上でネックになってきそうだ。

リアルロボコップの登場は、まだしばらく先かもしれない。それでも、AIの力を借りた機械が人間の警備業務を支援する日は、刻一刻と迫っている。