日本企業で進むRPA導入の…「働き方改革」も加速に期待

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)――つまりロボットによる業務自動化への取り組みが日本でも進み始めている。「デジタルレイバー」「仮想知的労働者」などとも言い換えられ、人間の知能をコンピューター上で再現しようとするAI(人工知能)や、AIが反復によって学ぶ「機械学習」といった技術を採用して、いわゆるホワイトカラーの業務のなかでも、主にマニュアル化が可能なデスクワークを自動化していこうというものだ。

アクセンチュアの金融サービス本部シニア・マネジャーの信方章吾氏は、金融系WEBマガジン「The Finance」に掲載された記事の中で「RPAの概要や特徴を簡単にまとめると、以下の様に言える」とまとめている。

●定型的なルールに基づいた判断を伴った入力オペレーション技術であり、イベントドリブンでアプリケーションを操作

●複数のアプリケーションにまたがったワークフロー上で稼働

●コーディングが不要(ただし、ソフトウェア上での業務プロセス定義や各プロセスでの操作設定の定義付けは必要)

●24時間365日、常時稼働が可能

そして、RPA導入による期待効果としては、「主に『事務コストの削減』『ミスのない高品質なオペレーションの実現』『生産性の飛躍的向上』『簡易なシステム化』の4点」を挙げた(「The Finance」 2017年06月01日付)。

RPA導入を発表する日本の大手企業

では、実際に日本ではどのような導入事例があるのだろうか。例えば2017年7月、アクセンチュアと共同で、三井住友海上火災保険が全社的なRPAの導入を発表している。アクセンチュアが開発したPC操作分析ツールを活用し、数百におよぶPC作業の詳細分析をした結果、その作業の約2割がRPA導入で自動化できる可能性があることがわかったという。

これまで同社は、社内からの個別リクエストごとに、ロボットが自動でPC作業を行うツールを自社開発し、社員や代理店が使うPC上で稼働させてきた。しかし今回、アクセンチュアの最新分析ツールと、同社のデータ分析ノウハウを活用することにより、個別リクエストごとのRPA化ではなく、全社的な業務の中からRPAに適した業務を洗い出すことが可能になったという。

また、同じく2017年7月、大和ハウス工業もまた基幹業務にベーステクノロジー「BizRobo!」を活用したRPAの導入を決定している。同社のRPAを適用する要件の定義やソフトウェアロボットの開発は、アビームコンサルティングが支援するかたちで行われるという。

大和ハウス工業については、RPAの導入にあたり「働き方改革の推進」「内部統制業務の効率化」「法令順守、コンプライアンスの強化」「連結決算の生産性向上」「日常会計の生産性向上」「経営管理の高度化」「情報収集のコスト削減とスピード向上」の7つの業務領域を選定し、その適用が進められてきた。

このうち「働き方改革の推進」に関しては、その背景として勤怠状況の多面的な実態把握が求められる中、勤怠情報を網羅的に自動取得してポリシーにのっとったチェックや分析を実施するソフトウェアロボットを導入する。問題点の見える化と改善を進めるという。また、法令順守とコンプライアンスの強化では、建設業界における社会保険加入率向上が求められる中、全社で起用する数千という協力会社の社会保険加入状況を定期的に可視化するため、情報集計、分析業務を自動化する、といった具合だ。

さらに、日本RPA協会が主催した「RPA SUMMIIT 2017」では、三菱東京UFJ銀行デジタル企画部上席調査役・西田良映氏による「RPAによるデジタルトランスフォーメーション~MUFGにおけるRPA活用戦略~」と題された講演が行われ、同行の数年に渡ったRPA導入プロジェクトについても詳しく発表されている。

同行がパイロットプロジェクトに着手したのは2014年。2年以上におよんだプロジェクトを経て2017年1月に、RPAのベーステクノロジーである「BizRobo!」の共通基盤をAmazon Web Services(AWS)上に移動させ、5月にはパイロット版で構築してきたすべてを、その基盤に移行したという。

パイロットプロジェクトを実施したのは、融資事務センターでの住宅ローン団体信用保険申告書の点検業務。担当者が紙で1枚ずつ確認する形式を取っていた保険会社へ提出する書類のチェックと、住宅ローンの明細との突合作業を対象とした。

こうして、申込書をスキャンで電子化したものをOCRでデータとして抜き出し、そのデータをロボットが点検する形に変更。ロボットが結果を表計算ソフトに落とし、不備があるものをオペレーターが見るという形へと移行することになったという。同時に、住宅ローンの明細との突合作業もロボットが行い、不備があるものだけをオペレーターがチェックする。

ちなみに同行ではRPAのみならず、案件ごとに使うソフトウェアロボットも変更したという。WEBを巡回して特定項目の情報を収集する「Webクローラー」や「RDA(ロボティックデスクトップオートメーション)」、そして「RPA」の中から、システム本部と使い方を定義し、チャートにのっとって選ぶ。

Webクローラーは、サーバ上にロボットを配置すると、自分でブラウザを開いてWEBシステムにアクセスし、操作するプログラムだ。ロボットの展開が効率的であることが利点であり、WEBや表計算ソフトの操作などを目的とした場合に選択する。

対してRDAはデスクトップにインストールして使うため、社員自身のIDを使って作業を代行することができるのが特徴だ。コールセンターなど、情報を収集して次のアクションにつなげる業務には向いているが、現場に設置したPCで動くため、障害時を考慮すればユーザー部内で保守体制を築くことが必要になる。

そして、この両者に当てはまらない全業務がRPAに任される。なお、今後の展開として同行は、国内においてリテールや法人業務というメジャーな分野で単純な業務からRPA化し、実績を示した上で、ニッチな業務や複雑な業務に進めていく予定としている。

また、海外ではグローバルで専任組織である「CoE(Center of Excellence)」を計画しており、開発体制を集約して、ロボットの利用は地域のビジネスアナリストが運用の枠組みを作り、地域のシステムにリーチする構造を考えているという。

RPAがもたらす「働き方改革」

アビームコンサルティングが2017年7月に開催したRPAに関する説明会で、戦略ビジネスユニットプリンシパルの安部慶喜氏は、日本の労働生産性が他国に比べて低いことに加え、今後の就業者減少を踏まえると、生産性向上が喫緊の課題であり、その解決策の1つがRPAだと説明している。

その上で安倍氏は、「労働時間の短縮だけを目的とした見かけ上の働き方改革ではなく、創造的な業務に費やせる時間の確保を目指した、真の働き方改革を目指すべき」(「マイナビニュース」2017年07月24日付)だと指摘した。

低コストで導入できることから、今後ますます需要が拡大していくであろうRPA。その投資は働き方を激変させてくれるのか——期待が高まる。