世界的な普及期に突入したAIスピーカー…重要課題はセキュリティーか

日本企業も参入!北米以外でもAIスピーカー戦国時代に

話題のIoT端末機器・家庭用AIスピーカー(以下、AIスピーカー)が世界的に普及の兆しを見せている。米国ではすでに800万世帯が利用しているとされており、2017年には世界累計販売台数は3300万台以上に達すると見込まれている。

現在、AIスピーカー市場を牽引するのは、米国内でシェア7割以上を誇る「Amazon Echo(アマゾン・エコー)」で、それを追のは「Google Home(グーグルホーム)」だ。販売台数の堅実な成長が見込まれている分野だけに、各メーカーおよびIT企業から新商品の構想・発売予定が相次いで発表されている。一例では、Appleの「HomePod」(北米、イギリス、オーストラリアでは2017年末発売予定)、マイクロソフト「Invoke」、パナソニック「SC-GA10(仮称)」、ソニー「LF-S50G(仮称)」、サムスン「VEGA」(上記4製品の発売時期は未定)などがある。日本市場でいち早く発売開始されそうなのは通信アプリ大手のLINEが手がける「WAVE」(2017年秋発売予定)だ。上記以外にも参入をほのめかしている企業は多く、まさに「AIスピーカー戦国時代」とも言うべき状況だ。

AIスピーカーは、ユーザーが話しかけた日常会話を理解し、「音楽再生」「ショッピング」「質問への回答」などのタスクを処理してくれる。例えば「ビートルズの曲をかけて」と語りかければ、スマホの中やクラウド上にあるその曲を再生してくれる。「バターが切れたから注文して」と言えば、自動でショッピングサイトに注文してくれるのだ。IoT機器に詳しい専門家のひとりは、AI lab編集部の取材に対して次のように説明する。

「AIスピーカーは今後、生活を手助けしてくれるアシスタントやハブというよりも、コントロール端末そのものになっていくはずです。いわば家全体のリモコンのようなものになる。ユーザーがAIスピーカーに話しかけることで、スマートロックや電子レンジ、お風呂、エアコンなどIoT家電を簡単に操作できるようになるでしょう。家電側がIoT対応するという点が前提条件になるものの、AIスピーカーが『スマートホーム』を実現してくなかで、キーテクノロジーになること間違いありません」

現時点では、AIアシスタントに連動したIoT家電もそれほど多くないため「タスク処理範囲」は限定的とも言えそうだが、今後、その利用シーンや利便性は着実に広がっていくと見込まれている。IT情報サイト「スクラムベンチャーズ」(2017年1月9日付)によると、2017年の「Consumer Electronics Show(CES2017)」では、Amazon Echoの人工知能「Alexa」を搭載するとしたIoT家電、もしくはデジタル製品が約700点以上展示されたそうだ。その1年前にはわずかひとつ(米フォードの自動車)だけだったことを考えると、スマートホームの司令塔としてのAIスピーカーという位置づけは、予想しているより早く確固としたものになっていくのかもしれない。

盗撮・盗聴と第三者による制御…2つのリスクにどう対処?

コンピューターに話しかけるだけで、お手軽に家事を手伝ってくれる――AIスピーカーが掲げるSFチックな未来像は、ユーザーや消費者の興味を一身に惹きはじめている。ただ一方で、AIスピーカーを生活に取り入れていくにあたっての「リスク」についても、にわかに議論が騒がしくなってきた。

まず、AIスピーカーが抱えるリスクのひとつに、「プライバシー侵害」がある。警察関係者のひとりは、AI lab編集部の取材に答えてそのリスクの可能性について指摘する。

「単純に技術的な話で言うと、マイクとスピーカーが内蔵され、それがインターネットが繋がっているとことは、すなわち世界中どこからでも家庭内の会話を聞くことができるのです。カメラが搭載されれば、覗き見の可能です。理論的には例えばアフリカから東京にある住居の内部を盗撮したり、盗聴することもできる。クラッカー(悪意のあるハッカー)が、AIスピーカーをハッキングすることも、可能性としては今後、充分あり得る話ではないか」

AIスピーカーが抱えるもうひとつのリスクとしては、家電などのコントロールを奪われるという事態も想定される。前出の専門家は「プライバシー侵害より危険」と前置きした上で、セキュリティー対策を真剣に考えていかねならないと警鐘を鳴らす。

「ハッキングによってAIスピーカーにクラッカーが侵入し、コントロールが奪われれば、IoT家電の“乗っ取り”が可能になるということ。つまり、個人情報が盗まれることより、もっと深刻な物理的被害を被るケースが生まれてくるでしょう。例えば、住宅にAIスピーカーと連動したスマートキーが設置されていれば、偽の指示を送り開錠することもできる。オーブンレンジの温度を勝手に高温にして、火事を引き起こさせることもできる。それ以外にも、物理的被害のバリエーションは数多く想定できますし、ランサムウェア被害も出てくるかもしれません。実際、IoT機器にまつわる類似被害事例は、すでに世界各地から報告され始めています。AIスピーカーに限りませんが、IoT機器全般が普及するなかセキュリティー対策に注意を向けていく必要があるでしょう」

2017年夏、中国製の家庭用見守りカメラがハッキングされ、持ち主が操作していないのに勝手にカメラが動き、映像がどこかへ送信されていたという騒動が一部で話題になった。類似の事例がAIスピーカーでも起こるかもしれないのだ。IoT機器が増えるにつれ、セキュリティー需要も確実に増えていくはず。被害者にならないようにリテラシーを高めつつも、それら課題をいかにビジネスにつなげるかという視点も同時に持ち合わせていきたいところだ。