AIで変わる・AIが変える[マーケティング]

AIスピーカーで変わるマーケティング

人工知能(AI)の普及は、企業のマーケティングをどのように変化させていくのだろうか。
現在、AIは人々の繋がりやショッピング履歴、訪問場所、収入、配偶者の有無、趣味嗜好など、あらゆるパーソナルデータを収集・分析する用途で使われはじめている。そのような状況下では、AIに対する理解、および活用戦略は必須となるが、AI×マーケティングという分野については、まだはっきりとした答えがみつかっていない。

企業担当者やマーケターは、AIによるマーケティングにおいて、どんな切り口から接近すればよいのだろうか。ここでは、SNSマーケティング専門企業・We Are Socialが行った興味深い示唆についてまず紹介したい。

テクノロジー・アート・ビジネスをテーマにしたイベント「Vivid Festival 2017」(豪シドニーにて同年3月開催)に登壇した、同社のグローバルコンサルタント・Simon Kemp氏と、豪州担当のSuzie Shaw氏は、「機械を対象にしたマーケティング-アルゴリズムが未来のすべてを支配する理由」という講演を行っている。ふたりは導入として「機械を対象にしたマーケティング」が必須になる未来がすぐに到来するとし、また人間より高い「共感能力」を持ったアルゴリズムそのものが、また別のアルゴリズムを生み出す時代も近いと展望した。

続いてShaw氏が強調したのは、ウェブ上で高い集客力を持つニュースサイトやメディア、フェイスブック、グーグルマップ、Tinde(出会い系アプリ)などサービスすべてが、アルゴリズムで動作しており、それらのマーケティング部門においては、プログラム化された広告およびSNSマーケティングのためのアルゴリズムが活用されているという点だった。このように、アルゴリズムが人々に影響を及ぼす範囲が広がる状況のなか、マーケターは人々を説得する時間よりも「アルゴリズムそのものに影響を与えることを考えなければならない」とShaw氏は主張する。つまり、今後の企業のビジネスの成否は、AIに影響を及ぼす能力によって左右されるというのだ。

一方、Kemp氏はShaw氏の指摘を補足するように、アマゾンエコーや、グーグル・ホームなど、近年、世界各国で普及しはじめているAIスピーカーを例に挙げた。Kemp氏は、それらの新しい端末が消費者の製品・サービス選択に影響を与え、時にブランドの地位を脅かすことさえあると指摘している。一体どういうことだろうか。Kemp氏の主張はこうだ。

例えば、消費者が家庭用AIスピーカーを通じて何か食料品を購入するとしよう。その際、ビールやおつまみ、アイスクリームなどといった表現をすることが一般的で、アサヒビール、亀田製菓、ハーゲンダッツというような特定のブランド名まで詳しく言及することはあまりない。その場合、AIが取る選択肢は大きく以下の4つとなる。

①端末が消費者に何のブランドを望むか聞き返す。
②端末が過去のデータに基づいて、消費者が前回購入したブランドを選択する。
③端末がSNS推薦リストなどから自動でブランドを選択する。
④端末が、消費者が過去に行ったウェブ上のアクションを分析(「いいね!」や掲示板における質問など)、もしくはIoTセンサーから得た情報などを駆使して個人的嗜好を割出し特定ブランドを推薦する。

実際にAIがどのような選択肢を選ぶかは不明だ。しかし、Kemp氏が予想するように、AIが選択した商品・サービスを、多くの人々が消費する傾向が強まるということだけは確実と言える。そのような将来的見通しがあるなか、ふたりはマーケターたちに「人々を説得するより、AIを説得する方法を学ぶべき」と提言しているということになる。

これまで商品やサービスを消費者にオススメするのは、人間の営業担当者もしくは販売員の役割だった。それがAIによって急速に代替していくと想像すれば、ふたりの指摘は大筋として正しいと考えられるのではないだろうか。

日本のマーケティングでも始まったAIの活用

We Are Social のふたりの提言は、マーケターに「AIの特性を理解した戦略を練るべき」というもだったと言い換えることができる。一方、AIを自社のマーケティングツールとして使用する動きも活発化してきている。

例えば日本では、三越伊勢丹ホールディングスがディープラーニングを搭載したAIアプリ「SENSY」を採用。ユーザーの好みをAIに学習させ、より洗練された「推薦」を目指している。また商船三井グループではAIを使って、自社が運営するフェリークルーズの認知度UP、フェリー好きする顧客の特徴抽出などを行っている。基となるのは、自社データベースに加えブログやSNSなど。独自の分析ツールを活用し、より訴求力が高い広告やメッセージを消費者に届けるのが狙いだ。

そもそもマーケティングという言葉は、市場調査から始まり、製造・輸送・保管・販売・宣伝などの全過程にわたって行う企業活動の総称するものとして定義されている。そう考えると、AIを援用できるパートは上記企業のような実用例にとどまらないだろう。

今後、「AIに対するマーケティング」、そして「AIを使ったマーケティング」の双方で、どのような手法を確立させていくべきか。近い将来、そのノウハウはマーケターをマーケターたらしめる絶対条件のひとつになっていくかもしれない。