「考える力」を与える…ロボット産業全体で加速する「AI搭載」の動き

技術者が2日かかった作業を8時間で終える

オムロンは2017年1月、アメリカの子会社オムロンアデプトテクノロジーズが開発した「屋内用モバイルロボットLDプラットフォーム」2シリーズ4形式を世界33カ国で一斉に発売した。独自の人口知能(AI)技術を搭載した同ロボットは、自動車や電子部品、食品・医療品などモノづくりの現場をはじめ、研究施設、物流倉庫などさまざまな屋内空間での利用は想定されている。周囲250°の障害物をリアルタイムに検知し、人や障害物を自動で回避しながら最適なルートを自ら考え、決められた場所に荷物を届けることが可能となる。

このように、これまで単純作業などの効率化を担ってきた産業用ロボットは今、自ら「考える」ことで、さらなる期待を集めている。

「(ロボットに知能を与えられれば)用途や作業内容を拡張でき、それが生産性の向上を後押しできる。ロボット自身が故障を予測できれば故障が生じる前に保守担当者にアラームを発し部品交換を促す『予知保全』が導入できる――」

そう語ったのは、産業用ロボットメーカーのファナック(FANUC)の取締役専務執行役員で、ロボット事業本部長の稲葉清典氏だ。東京ビッグサイトで2017年5月に開かれた「IoT/M2M展」(主催リードエグジビション ジャパン)において、稲葉氏は「止まらない工場(ZDT:Zero Down Time)」すなわち「工場の稼働率向上」を目指した知能ロボットの開発を行っていくと説明した。

具体的には、従来の産業用ロボットが担ってきた単純作業の効率化だけではなく、「見て、感じて、考える」の3つの知能を搭載することによって、人とロボットが工場内で協働して作業することを意識しているのだという。そのために重要なのが、見たものを「感じ」、「考える」ことだと稲葉氏は強調した。

例えば同社では、複数の部品が入った箱から1つずつ部品を取り出して仕分けするといった「ばら積み作業」について、ディープラーニング技術を適用し始めている。ロボットにこの作業を1万回学習させることで、部品の取り出しやすさの定量化に成功。これにより「ベテラン技術者が2日間かけていたティーチング作業を8時間で終えられるようになった」(稲葉氏)というのだ。学習した産業用ロボットが「考える」ようになることで、いずれは「品質改善」にもつながっていくだろうと期待を寄せている。

日本でもサービスロボット導入が本格化

一方、産業用ロボット大国であった日本でも、徐々に市場を拡大させているのがサービスロボットの文やだ。経済産業省は、2035年までの国内のロボット市場規模を予想しているが、2020年にサービスロボットが産業用ロボットの規模に近づき、2035年には産業用ロボットを越え、5兆円規模になるとも予想されている。

●2015年までに全体で1.6兆円(うちサービスロボット4000億円)
●2020年までに全体で2.9兆円(うちサービスロボット1兆円)
●2035年までに全体で9.7兆円(うちサービスロボット5兆円)

例えば、「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」として、2016年にギネス世界記録に認定された、長崎県佐世保市のハウステンボスの「変なホテル」には、MJIが開発したAI搭載の「TAPIA(タピア)」が客室コンシェルジュとして各部屋に設置されている。他言語対応で、「部屋の明かりを消して/つけて」など、タピアにお願いすることができるようになっているのだ。「変なホテル」はハウステンボスのほか、2017年3月には千葉・舞浜に、年内には都内にも新たなホテルをオープンするという。

そんな「変なホテル」で活躍する「TAPIA」は、家庭用の「みまもり」ロボットとしても人気だ。遠方に住む家族が高齢者の様子をモニタリングしたり、生活サポート、会話を楽しむこともできる。

こうした家庭用ロボットの需要は年々高まっており、今年9月には、アメリカで大人気の小型AIロボット「COZMO(コズモ)」をタカラトミーが日本でも発売した。こちらは「アニメや映画に出てくるかわいいロボットキャラクターを現実世界で作りたい」という思いのもと作られたロボットのため、アニメーションの感情表現が豊かだったり、目を離すとイタズラをしたりと愛らしい。

アメリカでは、2016年10月にAnki社より発売され、クリスマス商戦における高価格帯玩具($75以上)の中で2番目に売れた商品として注目を集めており、今年は日本のクリスマス商戦でも話題になること間違いないだろう。

職場で一緒に働くパートナーとして、さらにはお世話係やコミュニケーション相手として、私たちの日常に深く関わりつつあるAIロボットたち。彼らが普通に活躍する未来はもうすぐそこだ。