膨張する仮想通貨市場に人工知能が欠かせない理由

ビットコインは68万円を突破

劇的なスピードで成長を続ける仮想通貨市場。その種類および市場全体の価値総額も、右肩上がりの推移を続けている。「日本経済新聞」が報じたところによると、2017年7月時点で存在する仮想通貨の種類は約800。全体の時価総額は約9兆円に達するという。

仮想通貨とは、「各国政府や中央銀行が発行する通貨とは区別される、一定の規則によって価値が生まれる電子通貨」だ。つまり、特定の国家による保証を持たず、市場参加者の評価や信任で価値が成り立っているという特徴がある。

そのため、仮想通貨の“信頼性”については賛否両論がある。警鐘を鳴らす金融専門家も少なくない。米大手銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、2017年9月上旬に行われた投資家会議で、仮想通貨の代表格ビットコインについて「詐欺であり、崩壊する。(中略)どこからともなく通貨を生み出せたり、それを購入する人が本当に賢いと思われているようなところでビジネスなどできない」(「ロイター」電子版9月13日付)と厳しく指摘。加えて、自社のトレーダーが仮想通貨取引に関与していた場合、「即刻解雇する。その理由は二つで、第一に就業規則違反、第二に間抜けで、いずれも危険だからだ」と言い放った。

とはいえ、仮想通貨市場は堅調に成長する流れのようにも見える。2017年10月21日には、1ビットコインが6000ドル(約68万円、欧米市場)を突破。2017年末には、市場全体として2000億ドル規模を突破する可能性も囁かれ始めている。

仮想通貨取引の主役はAI!?

では、成長著しい仮想通貨市場において、人工知能(AI)はどのような役割を果たしていくのだろうか。まず想定されるは、AIを使った仮想通貨の自動運用だ。現在、株式や為替を自動で運用してくれる人工知能、通称「ロボアドバイザー」によるサービスが、世界各国の証券会社によって本格化しようとしている。仮想通貨という分野でも、同様のサービスが増加していくことはまず間違いない。

人工知能はまた、仮想通貨の投資戦略の構築、マーケット分析に使用されていく可能性が高い。例えば金融サービスを行うメタップスは、市場統計やニュース、SNS・顧客データなどを利用し、お金の流れを予測する人工知能「ラプラス(Laplace)」を開発している。最近では、そのAIを仮想通貨取引にも応用。データ解析と売買アルゴリズム構築・投資を進めると発表している。

<当社では、これまでお金の流れを予測するAIの研究の中で、購買・消費・株式・為替・不動産など様々なお金に関わるデータの収集と解析を進め、仮想通貨の取引データも解析の対象として株式市場や為替市場との類似点や相違点の調査を進めてまいりました。2017年予定の改正資金決済法の施行による仮想通貨の本格的な普及を見据え、仮想通貨の投資に特化した『Trading Studio』を開設し、AIアルゴリズムによるトレーディングと、それに付随するプロダクトの開発をおこなってまいります>(2017年3月8日付、同社リリース)

一方、仮想通貨の流通における監視体制を補完するのも、人工知能の役割となるかもしれない。クレジットカード会社大手や各国の銀行では、AIが持つ強みのひとつである「パターン認識」による異常検知を利用し、違法な取引を監視する手段として実用化しようとしている。当然、仮想通貨市場においても同様の使い方が想定されるだろう。

シリコンバレーに拠点を構えるSkryでは、ビットコインの取引の際に生まれる犯罪やリスクを回避するために、専用の人工知能プラットフォームを開発している。同社プラットフォームは、ビットコイン専用の台帳「ブロックチェーン」のデータを分析。不審な行動を検知・予測し、数値化した上でユーザーに情報を提供してくれる。

AI同士が仮想通貨で取引する近未来

仮想通貨の取引が活発な韓国では、興味深い指摘も出てきている。それは、「仮想通貨がAI時代の主要な通貨になる」というものだ。

『私は仮想通貨で3か月3億ウォン(約3000万円)を稼いだ』という著書を執筆した仮想通貨専門家のビン・ヒョヌ氏は、韓国メディアが主催した「2017投資フォーラム」で次のように話している。

<人工知能は仮想通貨を使うようになるし、人工知能に対価を支払う際には仮想通貨を使うべき。(中略)人間同士はドルや仮想通貨を併用するが、人工知能同士の取引が増えれば、ドルは徐々に使われなくなるのではないか>(「ニュース・ピム」2017年10月26日付)

前述したように、個人や企業が仮想通貨の取引の際、人工知能を使ったツールを広く利用し始めるのは時間の問題だろう。それより先の未来、つまり人工知能が社会の隅々まで浸透する時代には、仮想通貨が主要な通貨になるというのがビン氏の予想だ。言い換えれば、AIがより多くの社会的な役割を果たすためには、仮想通貨の存在は欠かせないという指摘にも聞こえる。

お金の流れが合理化することはすなわち、より多くの利益が社会に還元されることを意味する。各国で賛否両論の続く仮想通貨は、人工知能の力でどう変化していくのか。AIテクノロジーがもたらす通貨の未来に注目したい。