AIがもたらした産業ロボットの劇的な変革

完全ティーチレスの産業ロボットが誕生

製造現場の人手不足や労働コストの上昇などを背景に、産業用ロボットの自動化ニーズが高まっている。日本も成長戦略の一環にロボット産業の振興を位置づけているが、そこで期待されているのが産業ロボットとAIの融合だ。実際にドイツの「Industrie4.0」、中国の「中国製造2025」など、各国が生産性向上のためにAI技術を活用した産業競争力施策を打ち出している。世界的な時流といえそうだ。

産業用ロボットにAIが活用されると、さまざまな変革が起きるのだが、最も注目されているのは自ら学習して、生産性の改善につなげる産業用ロボットの登場だろう。

「産業用ロボットをより知能的に、より使いやすく」を掲げる産業用ロボット大手のMUJINは、産業ロボット技術にAIを活用し、多くの制御装置を開発している。代表格は、ばら積み部品のピッキングに特化したロボットシステム「ピックワーカー」だろう。従来はロボットに何かの作業をさせたい場合、事前にロボットに作業を覚えさせる手間がかかった。しかしピックワーカーでは、人間がロボットに動作をティーチングする必要はない。“完全ティーチレス”なロボットシステムなのだ。

ピックワーカーは3Dカメラ、MUJINコントローラ3Dビジョン、MUJINコントローラ、ロボットの4要素で構成されている。3Dカメラの画像データをMUJINコントローラ3Dビジョンが認識し、そこからMUJINコントローラが動作生成をしてロボットに動作指示をする。MUJINの公式HPによれば、「標準装備された高精度な3Dシミュレーターを駆使する事で、専門家でなくても3週間程度で産業用ロボットによるばら積みピッキングを立ち上げることを可能にした、世界初の完全ティーチレス/知能ロボットコントローラ」だという。

ピックワーカーのわかりやすい応用事例としては、物流でのピッキングがある。物流センターでは数万種といった超多品種を取り扱うこともあるため、莫大な人手がかかる。ピッキングワーカーは「超多品種ピッキングの自動化を実現できる唯一の製品であり、ある物流センターで世界初の全自動ピッキングシステムを実現」しているそうだ。タッチパネルを用いて直感的な捜査で対応可能なシステムにするなど、実用性も高い。

産業用ロボットの学習、カギは時間短縮

AIを活用することで産業ロボットが勝手に学習してくれるようになっているわけだが、その文脈でいえば、三菱電機が開発した「スマートに学習できるAI」も興味深い。

産業用ロボットが自ら学習するといっても、従来は膨大な施行数とそれに伴う学習時間が必要となっていた。三菱電機の「スマートに学習できるAI」はその学習時間を大幅に減らしてくれるという。同社は「今回開発した技術は、従来のAI技術と比べ約50分の1の試行数で学習が完了します」と発表している。独自の深層強化アルゴリズムと「コンパクトな人工知能」を組み合わせることで、演算量を通常の100分の1まで低減。メモリ容量やCPU処理性能が高くない機器にも搭載可能だそうだ。

AIはシミュレーターのなかでは試行錯誤を素早く繰り返すことができるが、現実世界のロボットの動きはそれほど早くない。そのため、試行錯誤する学習時間を減らす必要があるわけだが、そのためのアプローチとして、米カリフォルニア大学バークレー校のロボット研究チームの発想も見逃せない。

同研究チームは、2015年に自ら学習していく産業用ロボット「BRETT(ブレット)」を発表しているのだが、BRETTにVRシステムを組み合わせることで訓練の効率化に成功したという。人間がVRヘッドセットを着用しモーションコントローラでオペレーションをすることで、プログラミングに数週間から数カ月かかっていた時間が1日に縮小したそうだ。

ロボットに新たな技術を取得させたいときに、人間の動きを真似させるだけで正確に学んでくれるので、非常に手軽で便利だろう。自ら学習するAIロボットであるからこそ、こういった応用も可能なのだ。

AIを活用することで、自ら試行錯誤して学習するようになった産業ロボット。人手不足や労働コストの上昇などの問題を解決する救世主になるかもしれない。