ものづくりの現場で実用化が始まった「画像認識AI」

製造現場の「点検」で活躍する画像認識AI

人工知能(AI)は、ディープラーニングなどの技術的ブレイクスルーによって、画像認識分野で大きな力を発揮し始めている。2016~2017年にかけ、また将来的にもAIがビジネストレンドとして注目され続けるなか、画像認識という用途において実用化はどこまで進んでいるのだろうか。その動向をチェックしてみたい。

AI×画像認識の使い道は数多くあれど、最近、特に注目すべきは製造業の現場で実用化が進んでいることではないだろうか。例えば2017年11月には、NTTコムウェアがディープラーニングを採用した画像認識AI「Deeptector」と、日本ヒューレット・パッカード社製のコンバージドIoTシステム「HPE Edgeline EL1000」を組み合わせた、外観点検・インフラ点検用途の「産業用エッジAIパッケージ」を発表している。NTTコムウェアは、同年3月から「Deep Learning 画像認識プラットフォーム」のインストール版とクラウド版を順次リリースしているが、今回発表された製品はよりクライアントのニーズに即したものとなった。

製造業の現場では、振動や温度変化など過酷な状況において、データを集めるハードウェアの確実な動作が求められる。加えて、データを社内で管理したいとの需要が高い。そのためNTTコムウェアは、信頼できるハードを採用することに加え、AIプラットフォーム「Deeptector」をより最適化することで、総合的なソリューションとして提供することを決めた。

<NTTコムウェアの画像認識AI 「Deeptector®」は、人の「目」による判断工程を持つ各企業に対する Deep Learningソリューションです。人の「目」を代替することで、扱う情報の量の増加・質の高度化に伴う人手不足、有スキル者の高齢化に伴うスキル継承などの課題を解決します。監視・検閲、保全・点検、製品検査などの現場における目視判断基準を学習することで、現場に必要な画像認識の達人へ成長します。>(日本ヒューレット・パッカードの2017年11月1日付リリースより引用)

1.8万枚の画像から学習…キユーピーの事例

一方、マヨネーズでお馴染みのキユーピーは、画像認識AIを不良材料の選別に導入。2018年から本格的に運用を始めるという。キユーピーの工場では、1日あたり4~5トンの食材を使用しており、ひとつの工場で処理される材料の総数は400種にのぼるという。そこでは、いかに効率的に不良食材を選別できるかが大きな課題となってきた。これまでは、熟練した人間の作業員がその目で不良材料を選抜してきたが、生産量を増やすとなると人員確保や作業員の個々の能力・体力に限界がでてくる。また、カメラやセンサーを利用したマシンビジョンシステムの導入は、高価な設備費と大規模な作業スペースが必要となり、正確性にも課題があった。

そこで同社は、開発パートナーのブレインパッドとともに、不良材料の選別を迅速に行えるAIソリューションの開発に乗り出した。まずテストに使用されたのは、画像判断の難易度が高い「みじん切りジャガイモ」だった。トータルで1万8000枚以上にも及ぶ画像を使用し、AIに不良ジャガイモについて学習させたという。

<人間による作業では疲労による集中力の低下などで時間が経つにつれ効率が下がるが、自動選別の作業効率は一定に保てる。「実質的に検査速度を2倍にアップできる」(渡辺龍太執行役員生産本部長)>(「日刊工業新聞」2017年11月28日付の記事「キユーピーがAI画像認識でポテト選別」より引用)

日本のものづくりが促す画像認識AIの未来

紹介した事例はいずれも、作業の正確性向上のみならず、働き手不足やデータ量増加など、企業が現代を生き抜くための課題に焦点をあてたAIソリューションだ。現在、企業に山積する手書き文字データを効率的にデジタル化し、バックオフィス業務を支援することを目的とする文字認識AI「インテリジェントOCR」の利活用も、具体的な実用例が相次いで誕生している。AI Lab編集部の取材に対して、あるAI開発企業の関係者はこう述べた。

「ネット上の画像データを利用する検索などウェブ関連のAIサービスでは、プラットフォームをおさえているグーグルなど外資系企業が有利かもしれません。しかし、製造業の分野などでは、ものづくりに強みを持つ日本勢が有利だと思います。データを集めAIを強化できる分野も多岐にわたるでしょう」

なお直近では、世界で大きなシェアを誇る日本の産業用ロボットメーカーが、AIを搭載したスマートピッキングロボットや、生産ラインを監督するAIソリューションを次々に市場に投入している動きもある。今後、世界に先駆けて、日本企業が画像認識×AI開発の新たな口火を切ることに成功するのだろうか。注目が集まる。