人類の難問である環境問題を解決するため動き始めた「グリーンAI」

AIでゴミ処理が5倍早くなる

「グリーンAI」という言葉をご存知だろうか。AI(人工知能)を活用し、地球温暖化や大気汚染への対策、生物多様性の保全、エネルギーの最適・均衡的配分などに取り組もうという試みだ。現在、環境分野ではAIの活用は進んでおり、問題を改善する重要なカギを握っているといえる。

例えば、スペインのSADAKO TECHNOLOGIESが開発した、AI搭載の「ゴミ自動分別ロボット」はその代表例だろう。これは数多くのゴミのなかから、リサイクルできるものをピックアップしてくれる。画像認識による物体検出や、アームの制御などにAIを活用しているとのこと。公開されている動画を見ると、ベルトコンベアに流れてくるゴミのなかから、ペットボトルを上手に分類していた。

AIを活用して廃棄物を選別する試みは、日本ではすでに実用段階に入っている。産業廃棄物処理業者のシタラ興産は、これまで人間が手作業で実施していた廃棄物の選別作業をロボットに置き換えた。木くずやガレキ類、廃プラスチック、ガラスなどを拾い上げて、仕分けをする。人の手では1日当たり300~400トンの処理が限界だったが、AIロボットを導入したことで処理量は2000トンに拡大。ロボットを導入したことで、選別の作業員を10分の1に削減したそうだ。最近、業種を問わず人手不足が顕著な日本において、AIがその一役を担う好例だろう。

森林伐採や省エネ対策でも導入進む

自然界への影響を無視した土地開発や森林伐採も重大な環境問題のひとつだが、こうした問題にもAIが寄与するかもしれない。

世界資源研究所(WRI)は、アメリカの衛星画像解析会社・オービタル・インサイトと提携し、森林破壊を監視・予測する取り組みを進めている。膨大な衛生写真を撮影し、そのデータをAIで分析。新しく建設される道路や森林伐採などの兆候を把握し、どのエリアの森林資源が危険にさらされる可能性が高いかを予測する。データ分析と未来予測というAIの強みを生かしたプロジェクトといえそうだ。ちなみに、AIが分析した結果は当局者に提供して、開発活動などを防ぐために利用されるという。

一方、より身近な環境分野の取り組みとして省エネが挙げられるが、エネルギー資源を節約する活動にもAIは効果的に利用できる。日本の新電力・エネットはオーストラリアのAIベンチャーと組み、法人向けの省エネサービス「Ennet Eye」を開始。オフィスや店舗など高圧部門の建物が対象で、30分ごとの電気使用量・気象情報・料金情報など様々なデータをAIが解析し、店舗やビルの実態にあった省エネ対策をタイムリーに配信するサービスだ。

「日経ビジネスオンライン」(2017年10月5日付)の記事「エネットが初の商用化、AIで自動省エネ診断」では、同サービスについて「AIエンジンが過去データや気象データとの相関関係から、異常や改善点を見つけると、翌日にはサービス利用企業の担当者の元に、こうしたメールが入る。夜間の照明の消し忘れや、設備の運転時間の長時間化などを自動で抽出し、対象の建物名や時間、電気料金への影響や対策を顧客に知らせる」とレポートしている。ただ「見える化」するだけでなく、対策まで通知するところに同サービスの特長があるといえそうだ。

環境問題の原因解明に寄与

環境分野におけるAI活用の可能性は、上記のような実用面だけではない。というのも、環境破壊の原因解明にもAIは一役買っているからだ。

例えば、AIの機械学習によって、地球温暖化は人間活動による二酸化炭素排出に原因があるのではなく、自然の長期的な気温変動周期だという研究結果が出た。オーストラリアのシンクタンク・Institute of Public Affairsが発表したもので、樹木の年輪やサンゴの骨格年輪などの間接データから得た、過去2000年間の北半球での長期的な気温データに着目。もし産業革命が起こらなかった場合、20世紀の気温変化はどのようなものになったかをAIに予測させたという。

予測では産業革命が起こらなかった場合も、「1980年までの気温上昇とその後の気温低下が起こる」という結果だった。つまり、地球温暖化は自然の長期的な気温変動周期にすぎないという予測だ。この研究結果が必ずしも正しいというわけではないだろう。しかし、膨大なデータから未来を予測するというAIの強みを生かした研究結果は注目に値するだろう。

環境分野への直接的な貢献や原因究明に活用されている「グリーンAI」。人類の力では長らく解決できなかった難問をAIの力で解く、最初の一歩になるかもしれない。