AIを活用した「宇宙開発」最前線

人間が見逃していた新惑星をAIが発見

2017年12月にグーグルとNASAは人工知能を使って新しい惑星を発見したと発表した。地球から2545光年も離れた恒星ケプラー90の新たな惑星、「ケプラー90i」を発見したのだ。ケプラー90にはこれまでに7つの惑星が確認されていたが、今回8つ目の惑星が見つかったという。

見逃せないのは、NASAの新たな観測方法だろう。ケプラー宇宙望遠鏡の観測データをAIに分析させているのだ。グーグルは会見で「写真に写った猫や犬を識別するのと本質的には同じツールを使用して、過去4年間に集めたケプラーのデータを分析した」と説明。つまり、すでに“分析済み”とされていたケプラー90の観測データを、AIが再び分析することによって、新しい惑星を発見することができたということだ。

ちなみに、グーグルとNASAは同じ手法でケプラー80の第6惑星「ケプラー80g」も発見している。現在までにグーグルのAIが分析したのは、ケプラーで観察された約20万の天体のうち670個のみ。それだけのデータで2つの惑星を発見しているだけに、より多くのデータを分析すればさらに新しい発見も期待できるだろう。

またNASAは「月の地図」も人工知能を活用して作っているという。インテルのディープラーニング技術を活用し、月面の画像から月のクレーターを探知するシステムを開発。クレーター探知の精度は98%、1分間に処理できる画像数は1000枚にも上るという。

テックメディア「WIRED」(2017年12月29日付)の記事「NASAは人工知能で『月の地図』をつくっている ─宇宙でディープラーニングなどの民間技術が飛躍する理由」によると、これまで「粗い地図からクレーターを見つけて地図に起こす作業は、人間の手では小さな区画でも数週間かかっていた」が、そのシステムを使うことで「専門家が手作業で3時間かけて行う作業を、ほぼ同じ精度で1分でこなせる」のだそうだ。人間には骨の折れる作業を人工知能が担ってくれているというわけだ。

国内ではNECもAIを使ったデータ分析技術を米ロッキード・マーチンに提供すると発表している。提供するのはNEC独自の「インバリアント分析技術」。同技術は、多数のセンサーから得た大量のデータからシステムの振る舞いを学習し、システム自体が「いつも違う動き」を検出して早期対処を可能にするというもの。ロッキード・マーチンが開発する人工衛星や宇宙船などから多様なデータを集めて、宇宙の気候が電子機器に与える影響などを分析し、製品の性能やライフサイクル効率を改善させると期待されている。

ロッキード・マーチン・ステペースシステムのカール・マルケット副社長は、ウェブメディア「IoTNEWS』(2017年12月14日付)でこう語っている。

<ロッキード・マーチンとNECはそれぞれ衛星・宇宙航空分野とシステム設計のエキスパートであり、AIが宇宙飛行士と地上側の人々のための宇宙関連製品をどのように改善できるかを探求するのにふさわしい組合せと考えています。火星やその先への有人任務を含む、軌道航行と深宇宙探査の両方において、AIは我々が宇宙から得られる情報の利用方法に変革をもたらすことができます>(前掲記事「衛星・宇宙航空分野にNECのAI技術を活用、ロッキード・マーティン社」より引用)

日本企業が宇宙開発の最前線を担っているということは、誇らしい限りだろう。

宇宙飛行士も「人工知能は欠かせない」

宇宙開発においてAIが変革をもたらす――その主張はIT大手や電機メーカーばかりでなく、宇宙飛行士も同じだ。今後の宇宙開発には、人工知能の活用が欠かせなくなると提唱しているのは、女性宇宙飛行士の山崎直子氏だ。彼女は2017年4月に開かれた「IBM Watson Summit 2017」で、「宇宙と人工知能」というテーマの講演を行っている。

山崎氏によれば、現在の宇宙開発では人工衛星から大量の情報が送られ、それがビッグデータに生成されているという。このビッグデータから新しい価値や発見を生み出すため、ワトソンのような人工知能を活用すべきだと述べている。

現在、人工衛星は世界で7000機以上も打ち上げられており、それらから送られるデータ量は膨大だ。人工衛星を通じて、アメリカの海洋気象庁が生成するビッグデータの量は1日で20テラバイトにもなるという。こうした大量のデータを処理・分析して「意味のあるデータ」にし、有効活用するためには人工知能の存在が必要不可欠ということだろう。

大宇宙の謎を解明するとなると、その道のりは果てしなく遠い。それでも、カギを握るのが人工知能であることだけは間違いなさそうだ。